川本梅花 フットボールタクティクス

【コラム】理想を追いかけて失敗した監督【無料記事】#ラインメール青森 監督とコーチ陣の辞任

【コラム】理想を追いかけて失敗した監督

第22回日本フットボールリーグ(JFL)の幕が閉じた。ラインメール青森FCの成績は、16チーム中の15位。望月達也氏が監督に就任して3年目となった今季、年々チームが弱体化していく中、全く話にならない成績となった。今季の青森は、J3リーグに昇格するチャンスだった。これまで観客動員数が昇格の足かせになっていたが、今季はその条件なしに昇格できる状況だった。しかし、成績が追いつかない。今季はコロナ禍の特例措置により、降格は見送られたものの、例年ならば15位は、社会人リーグへ降格する位置である。

監督だった望月達也氏、GKコーチ、さらにヘッドコーチ。この3人の契約満了が発表された。

青森は来季、一からチームを作り直すことになる。望月監督が3年間で、どのようなサッカーを築いたのか。それには、望月監督がどんなサッカーを作りたかったのかを知る必要がある。その答えは、以下のインタビューに集約される。

【インタビュー】 #望月達也 監督「#萬代宏樹 #菊岡拓朗 #野田紘史 らの加入はキーポイントの1つ」【無料記事】JFL第3節 #流経大ドラゴンズ龍ケ崎 1〇2 #ラインメール青森(@reinmeer_aomori)

監督業は、本当に大変な仕事だ。勝てば称賛されるものの、負ければ非難される。また結果を出したとしても、監督の契約が延長されるとは限らない。とはいえ、監督の力量は第一に結果で測られる。その観点で望月監督の3年間を振り返ると、やはり不満が残る。

上記のインタビューで「自分たちの理想形はずっと先にある」と発言している。望月監督の掲げた理想形、コンセプトは、簡単に言えば「ボールを大事にして保持しながらゲームを支配する」である。さらに「ロングボールを蹴ってはいけないわけではなく、状況によって蹴ってもいい」という補足がつく。

この話を選手たちから聞いて「これでは勝てない」と真っ先に思った。一度聞く限り、理にかなった発言のように感じるかもしれない。しかし、はっきり言って、そうした試合運びができるならば、ラインメール青森FCはJFLにいない。

ただ、理想として「こうしたい」という気持ちは理解できる。所属選手の質という課題もあるのだから、理想を取りあえず脇に置いて、現実を見ないと試合には勝てない。JFLに限らずJリーグでも同じで、これは“やってはいけない”中途半端な理想である。

理想のサッカーを実践するため、望月監督は自分と関係性があるベテラン選手、萬代宏樹、菊岡拓朗、野田紘史に声をかける。さらに今季は、神山竜一と太田康介を加入させた。しかし、神山と太田は今季限りで現役を引退。ベテラン選手の加入により、チーム力をアップして理想のサッカーに近づけようと考えたものの、実際は、そうならなかった。

正直に言って、チームを預けるには長すぎる3年間だった。1年目のサッカーと発言から、この結果は予想できた。「Jで指揮を執っていた」というプライドが現実から目を背けさせた。過去のインタビューからも、そのことがうかがえる。

川本梅花

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