川本梅花 フットボールタクティクス

【プレビュー】注目すべき選手は誰か?【会員限定】J3第30節 #ヴァンラーレ八戸 対 #YS横浜

【プレビュー】注目すべき選手は誰か?

明治安田生命J3リーグ第29節・ガイナーレ鳥取戦に2-1で勝利を収めたヴァンラーレ八戸。37分、鳥取MF可児壮隆が八戸FW安藤翼にスパイクの裏で蹴りを入れたと判断されて退場。八戸の数的有利となったが、たとえ可児が退場していなくても、結果は同じだったに違いない。そう思わせるほど、八戸は完璧な戦い方を見せた。

鳥取戦では、八戸の何が良かったのか。良かった点を継続できれば、Y.S.C.C.横浜相手でも勝てる確率は高まる。ここでは、その良かった点を述べたい。

最初に挙げるべきは、守備の安定だ。3バックを構成するメンバーは、自分のポジションを守りながら、カバーリングすべき場面ではスペースを埋める。ビルドアップの際、自分の前のスペースが空いていたら、ボールを持ち運びチャンスを作る。こうした攻守と守攻の切り替えが明確に行われていた。この結果、守備の安定がもたらされた。

3バックの中央には須藤貴郁、左のストッパーには深井脩平、右のストッパーは黒石貴哉が置かれた中央の須藤は、最終ラインのラインコントロールから、選手に声を掛けて指示をするコーチングなど、高い統率力を示した。

また深井は、3バック中央よりも左の方がマッチしている。深井は、カバーリングに長けた選手なのだろう。右の黒石は、昨季の小牧成亘(現ガイナーレ鳥取)が右ストッパーで使われて活躍した時のような可能性を見せた。

DFは3人とも180センチ以上で、動きもスピーディー。特に須藤と黒石はボールさばきが柔らかく、パスミスが少ない。この3人の組み合わせが、今季一番安定した最終ラインだった。

その須藤だが、11月26日に現役引退を表明した。とても残念な選択だが、鳥取戦でのプレーは、心に期するものがあったことが分かる。集中力を保ち、闘志をあらわにした彼のプレー。私の記憶に深く刻まれた須藤の活躍だった。YS横浜戦では、どういった最終ラインのメンバーになるのか。鳥取戦と同じメンバーを起用してほしい。

両チームのフォーメーションだが、八戸は前節と同じ「3-5-2」だろう。一方、YS横浜のシュタルフ悠紀リヒャルト監督は、戦術ラボ(研究所)の指揮官のようにシステムをいじってくるため、予測が難しい。YS横浜は、J3第28節の福島ユナイテッドFC戦(2- 2)で「4-1-3-2」の4バック、次のJ3第29節のカマタマーレ讃岐戦(0-1)では3バックシステムを敷いてきたが、福島と讃岐はともに3バックだった。そのためYS横浜は3バックの八戸に3バックで臨むのか、4バックで臨むのか、その予測は困難だ。

YS横浜の注目選手は、水戸ホーリーホックから加入したストライカーの宮本拓弥だ。宮本は早稲田大学蹴球部から水戸に加入。最初はFW登録だったが、結果が出ずにDFにコンバートする。もともとDFだったことからのコンバートだったが、周りの選手はDF一筋でやってきたプロフェッショナルたちばかり。FWからDFへの配置換えは、本人の決断だったが、リーグ戦ではチャンスに恵まれなかった。宮本がコンバートを決めた意図などのインタビューは以下を読んでもらいたい。

【インタビュー】#宮本拓弥(#水戸ホーリーホック)「僕は僕自身を諦めません」【無料記事】彼は何から「打破」しようとしたのか

宮本にはパンチ力のあるシュートがあるため、DFへのコンバートはもったいないと思った。FWとしてもっと格闘すべきではないかと彼に話したこともある。しかし本人の決断だったため、周りも了承したのだろう。水戸を契約満了となって、YS横浜に加入した後、再びFW登録となった。J3第29節終了時点で13得点、リーグ3位のポジションにいる。1点を取るのに苦しんでいた選手が、J3とはいえ13点も挙げている理由は、彼の潜在能力が発揮されたからだろう。八戸DFにとっては、危険な存在となる。

一方、八戸の注目選手は、FW安藤だ。動き出しとポジショニング、そしてシュートの際に見せる、足の振りの速さは見るべきものがある。今季6点目を決めた鳥取戦に続く、連続得点を期待したい。また、センターハーフ(CH)に新井山祥智を起用するのか、または別の選手を起用するのか。さらにトップ下に誰を起用するのか。高見啓太なの中村太一なのか、それとも秋吉泰佑を使ってくるのか。数少ない現有戦力をいかに回していくのか。ここに八戸の課題が浮き彫りとなる。

最初にも書いたように、メンタリティー(精神)とタクティクス(戦術)において、鳥取戦と同じレベルの戦い方をすれば、勝利の女神は八戸にほほ笑むだろう。

川本梅花

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