川本梅花 フットボールタクティクス

【コラム】選手、クラブにとって厳しい生存競争【無料記事】J3第27節 #ヴァンラーレ八戸 対 #ガンバ大阪 U-23

【コラム】選手、クラブにとって厳しい生存競争

11月15日に明治安田生命J3リーグ第27節、ヴァンラーレ八戸対ガンバ大阪U-23があります。J3第26節終了時点で、八戸は15位、G大阪U-23は14位。以前のコラムでも記しましたが、八戸にとっては来季の編成、補強を考える時期です。そのため、現在所属する選手にとっては1試合1試合が、死活問題となります。チームにとっての補強は、現在契約している選手にとって契約更改の問題となります。そのため選手たちは、強化部に好印象を強く与えなければならない。

一方、昨季はクラブが引き留めたにもかかわらず、小牧成亘はガイナーレ鳥取へ、三田尚希はAC長野パルセイロへ移籍しました。好条件を提示したクラブへ移籍することは、サッカー選手として当然の選択です。そのため契約更改の時期には、こうしたことが起きる可能性が毎年あるのです。

中口雅史監督は、あまり評価していなかったようですが、FW安藤翼は点取り屋として高い潜在能力を持っています。継続して起用していれば、現時点で10得点以上を記録していたことでしょう(現5得点)。11月8日に行われたJ3第26節・いわてグルージャ盛岡戦では、相手GKとDFのスーパーセーブにより無得点でしたが、何度も得点の匂いをさせていました。MF村瀬勇太からのパスを相手DFの裏で受けてGKと1対1になるなど、村瀬とマッチ。パッサーの村瀬も安藤のポジショニングや飛び出しのタイミングが良いため、選択肢が増えて楽しそうにプレーしていました。

安藤は、JFL(日本フットボールリーグ)のホンダロックSCから八戸に加入しました。JFLからJ3に移籍してすぐフィットする選手は、なかなかいません。JFLとJ3を比べた場合、スピードとフィジカルの違いは明白で、移籍してすぐには適合しにくいのです。

しかし、安藤は違っていました。中口監督は、どうして彼を積極的に使わないのか、全く理解できませんでした。J3の中でもJ2昇格を狙うクラブは、黙っていないと思います。安藤自身の考えは分かりませんが、彼のプレーには、得点を期待させる「何か」があるのです。ポジショニング、シュート意識の高さ、ストイックさ、ハングリーなメンタリティー……。文字にすると、こうした言葉が並びますが、それらを総称して「持っている何か」を感じさせる選手です。

同じJFLのMIOびわこ滋賀から移籍してきたFW黒石貴哉は、最初J3のプレーレベルに慣れない様子でした。しかし10月に入ってから、黒石の良い点が見えてきました。中口監督に右ウイングで使われていた時は、ドリブルで仕掛けてはボールを奪われての繰り返しでした。しかしシステムが4バックから3バックとなり、左ウイングバック(WB)で使われてからは特徴が引き出され、本領発揮と言ったところです。シュート力もあるし、決定力もあります。コンバートが成功した好例となりました。右の國分将とは強力なWBコンビとなり、貴重な戦力となっています。

國分はチームで唯一、今季フルタイム出場を継続しています。そのことからも、どれだけ重要な選手であるかが分かります。以前のコラムで書きましたので詳しくは述べませんが、國分の攻撃力は八戸に欠かせません。彼は、背中がピッと伸びていて、プレーするその姿勢がとてもいい。ボールを持つと「何かしてくれる」との期待を抱かせます。

ここで挙げた選手たちに、他クラブから話がないとは考えられません。クラブとしては、なんとしても引き留めたい選手たちです。八戸の残り試合をどのように見ればいいのか。選手1人ひとりのプレーに注目していけば、いろいろなことが見えてくるはずです。

さて八戸の補強部分ですが、まず着手すべきはDFの獲得でしょう。来季も3バックを敷くならば、3人のDFが同じレベルでなければ、今季のように失点を重ねてしまいます。次に補強すべきポジションはFW。柱になるFWがいないことは大きな課題です。今季は選手起用にも問題があったため、柱になるFWが育たなかった。八戸が行うべき点は、チームとしてのシステムの確立、そしてDFとFWの獲得になります。ただ、最大の補強は、新監督なのかもしれません。

川本梅花

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