川本梅花 フットボールタクティクス

【試合分析】センターバックの選択肢を狭められて失点【無料記事】J3第5節 #SC相模原 2-1 #ヴァンラーレ八戸

センターバックの選択肢を狭められて失点

【目次】
中2日の過密日程。両チームとも先発メンバーを入れ替え
フリーになる八戸MF國領一平。相模原の対策は?
八戸に感じた「縦のライン」確立の必要性


分析対象試合:2020明治安田生命J3リーグ第5節 SC相模原 2-1 ヴァンラーレ八戸

過密日程を考慮した結果でしょう。両チームとも先発メンバーを入れ替えています。

参考:2020明治安田生命J3リーグ ヴァンラーレ八戸 出場記録
参考:2020明治安田生命J3リーグ SC相模原 出場記録

相模原は「4-4-2」の中盤がボックス型。八戸は「4-3-3」の中盤が逆三角形型です。組み合わせた図は以下の通り。

中2日の過密日程。両チームとも先発メンバーを入れ替え

両チームとも、3日前のJ3第4節(7月15日)から選手を入れ替えてきました。これは予想通り。過密日程による選手のコンディションを考慮するならば、当然の選択になります。相模原は、ブラジル国籍のホムロとユーリ、前節・アスルクラロ沼津戦[0△0]で先発した2人がベンチスタート。先発2トップは三島康平と清原翔平でした。

八戸は、右ウイングの黒石貴哉、左インサイドハーフの石ヶ森荘真が先発を外れ、右ウイングに丸岡悟、左インサイドハーフに新井山祥智を起用します。丸岡は前節・Y.S.C.C.横浜戦[2〇1]、左サイドバック(SB)で先発しましたが、後半から右ウイングにポジションを移していました。左SBの先発は佐藤和樹。右インサイドハーフは前田柊に代わり、貫名航世が起用されました。1トップは谷尾昂也。昨季は上形洋介とともに攻撃をけん引したものの、前節はベンチ入りすらせず。コンディションに問題があったのでしょうか。

また、前節スタメンの安藤翼はベンチスタートでした。安藤は開幕からの4試合を見る限り、最も得点の匂いをさせている選手です。もちろん連戦によるコンディションもあるのでしょうが、それでも、72分から登場した彼のパフォーマンスは、目を見張るものでした。

なぜ安藤翼をスタメンに固定しないのか。チームとしても諸事情あることは理解できますが、高見啓太とのコンビネーションは間違いなく、相手チームにとっての脅威です。2人がコンビで出場できるよう、可能な限りチャンスを与えてほしいと思います。

フリーになる八戸MF國領一平。相模原の対策は?

両チームのシステムを組み合わせると、八戸のアンカー・國領一平がフリーになります。プレビューでも記しましたが、相模原が対応する方法は2つ考えられます。2トップを縦関係にするか、センターハーフ(CH)の1人を前に出すかです。

【プレビュー】遠征メンバーからうかがえる苦しい台所事情【会員限定】J3第5節 SC相模原対ヴァンラーレ八戸

相模原の三浦文丈監督が採用した対策は、2トップを縦関係にすることでした。三島を前に残し、清原の位置を下げてきました。

この対策が功を奏し、八戸はビルドアップの際、センターバック(CB)が国領にボールを預けられなくなります。CBにとっては、非常にやりにくい。アンカーの國領にボールを預けられなくなった結果、CBの選択肢は狭まります。CBはどちらかのSBにパスを出すか、中盤を省略して前線にロングボールを蹴るしかありません。そうなると、相模原は八戸SBにボールが渡った瞬間、ボールサイドに選手をスライドさせ、八戸のボールホルダーをタッチラインに追い込み、ボールを奪いにかかります。八戸SBは攻撃のため、高い位置を取ろうとしているため、相模原は当然、その裏を突きます。

14分、相模原の先制点は、上記の展開から生まれます。八戸CBは國領に預けられないため、左サイドにボールを出しますが、ボールを奪われてしまいます。この時、八戸の左SB佐藤の背後には大きなスペースがあり、ここを相模原の右サイドハーフ(SH)松田詠太郎に使われてしまいます。松田が出したマイナスのパスに、ペナルティエリア中央にいた和田昌士が合わせ、右足のシュートで八戸ゴールネットを揺らしたのです。

國領も清原のケアを嫌がっていたように見えたので、中盤の配置を換えるという選択肢もありました。例えば、貫名の位置を下げ、國領とダブルボランチを組ませるとか。こうすれば、CBは國領か貫名にパスを出す選択肢を得られます。

八戸に感じた「縦のライン」確立の必要性

負傷やコンディション不良、過密日程……。八戸はJ3の中でも、決して選手層が厚い方ではないため、選手起用に苦労していることは理解できます。しかし開幕から5試合が経過。そろそろチームの基盤となる「縦のライン」を確立させるべきです。好調な選手を起用することも重要ですが、チームの基盤・軸をはっきりさせることも、チームの安定化につながるはずです。筆者の目からすると、DF河津良一、MF國領、FW安藤。この3人が軸となるでしょう。

また、丸岡はウイングよりもSBに適性があるため、SBに固定した方が良いと感じました。現代サッカーでは、1人の選手が複数ポジションをこなせる必要があるものの、丸岡は1年目の22歳。適正ポジションで長所を伸ばすことも大切ではないかと思います。

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