川本梅花 フットボールタクティクス

【試合分析】選手が戦術にマッチしないのか、戦術自体が間違いなのか【無料記事】J1第3節 #鹿島アントラーズ 0-2 #北海道コンサドーレ札幌

選手が戦術にマッチしないのか、戦術自体が間違いなのか

【目次】
ハイラインを敷く鹿島と、プレッシャーを掛けないFW
実践された「約束事」
選手が戦術にマッチしないのか、戦術自体が間違いなのか


分析対象試合:2020明治安田生命J1リーグ第3節 鹿島アントラーズ 0-2 北海道コンサドーレ札幌

J1第2節・川崎フロンターレ戦に続けて、鹿島アントラーズの戦い方をピックアップします。川崎F戦では、サッカーライターの清水英斗さんに話を聞きました。前編と後編があるので、そちらも読んでください。鹿島はどのようなサッカーをやろうとして、実際はどうなっているのか。ピッチで起こっている現象から、課題を分析します。

まず失点の場面を見ます。札幌DF宮澤裕樹から前線に出されたロングボールが鹿島ディフェンスラインを越えていきます。裏に走り出した札幌MF鈴木武蔵と鹿島GKクォン スンテが対面。クォン スンテは躊躇してしまい、鈴木にフリーでゴールネットを揺らされます。札幌から見ると、得点の要因は以下の2つ。

  • 宮澤裕樹のフィード
  • 鈴木武蔵の走り出し

これを鹿島側の視点から、失点の原因として分析します。

ハイラインを敷く鹿島と、プレッシャーを掛けないFW

鹿島はハイライン、つまりディフェンスラインを高く設定しています。すると、ゴールラインとディフェンスラインの間に広大なスペースができるため、ディフェンスラインの裏に出たボールの処理は、GKが行うこととなります。そのため、ハイラインを敷くチームのGKには素早い動き、決断力が求められます。
しかし、クォン スンテのプレースタイルは、この戦術にマッチしているとは思えません。

ハイラインを敷く場合、FWの守備も重要なポイントになります。具体的には、相手DFにプレッシャーを掛ける必要があります。ボールを奪う必要はありませんが、最低限ボールを外に追いやる守備が求められます。失点場面では、この仕事ができていなかったため、札幌DF宮澤はディフェンスライン中央でフリーとなり、得点につながるボールをFW鈴木へ供給されます。映像を見ていると守備らしい動きはしていますが、守備をしている「フリ」にしか思えませんでした。

実践された「約束事」

札幌FWジェイは、鹿島DF町田浩樹を釣り出そうと意図。札幌の2シャドーを追い越し、CHまで下がります。町田は最初、ジェイの動きに付いていくか迷ったはずです。鈴木には鹿島MFレオ シルバが付いているものの、自分がポジションを空けると、そのスペースに鈴木が走り込んでくると予想されたからです。結果、その通りとなります。

それでも町田がジェイに付いていった原因は、町田がジェイを、レオ シルバが鈴木を、それぞれケアする約束事があったと想像します。「ジェイにクサビのボールが入ったら、その瞬間につぶせ」と、ザーゴ監督から指示されていたのでしょう。トレーニングの内容が実践された。そうでもなければ、町田がポジションを空けた理由は説明できません。

選手が戦術にマッチしないのか、戦術自体が間違いなのか

J1第2節・川崎F戦におけるオフサイドトラップでも同じ感想を抱きましたが、鹿島は「やみくもに」ディフェンスラインを上げているように見えます。「やみくもに」を言い換えるならば、目の前にある状況よりもトレーニング内容を優先している、となるでしょうか。

さらにトレーニング内容を「戦術」と言い換えるならば、選手は戦術を全うしているとなる。それでも勝てないとなれば、戦術が選手にマッチしていないとなります。戦術が実際に試合を行う選手に合っていない結果、守備の破綻を招き、その悪影響が攻撃にも波及している。これが鹿島の現状ではないでしょうか。

鹿島の攻撃は再開後2試合で、オウンゴールの1得点のみ。数字だけ見ると低調ですが、ゴールポストやバーに嫌われるなど、不運な場面が何度かあり、チャンスは作れています。もし修正を行うならば、守備の方からとなるでしょう。

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