川本梅花 フットボールタクティクス

【連載】ヨハン クライフの教え【1日1回読むだけで身につくサッカーの見方の基礎知識】

【1日1回読むだけで身につくサッカーの見方の基礎知識】

ヨハン クライフの教え

オランダで指導者ライセンスを取得するために、日本人のHは講習会に出席していました。その際に、講師の一人が、トータルフットボールの実践者であるヨハン クライフの次のような言葉を話しました。

「いい選手とは悪いパスをいいパスにする」

この言葉を聞いたHは、「悪いパスを出されても、ピタッと足元でボールを止められること」と思ったのです。しかし、時間が経ってから、その講師が言ったクライフの言葉の意味の真意を理解することになります。それは、個々の選手がもつ「インテリジェンス」のことだと悟りました。つまり、見る側が「あのプレーはインテリジェンスがある」と思えるようなプレーのことです。

では、どんなプレーが「インテリジェンス」があると言えるプレーなのでしょうか。実は、「インテリジェンス」があるプレーとは、コーチなど誰かに教えることができないプレーのことを指します。

Hは、ある試合を見ていました。センターハーフ(CH)が、味方の左サイドバック(SB)からパスを受けてドリブルしながら前進します。CHの視界には、味方の右SBの選手がタッチライン近くにフリーで立っているのが映りました。CHは右SBにパスを送ります。しかし、そのパスは、相手の左ウイング(WG)の前に出されてしまいます。完全なパスミスでした。攻撃から守備への切り替えの場面で、攻撃を開始しようと選手が前に進もうとしていた味方のチームは、ハーフウェイラインのところで相手にボールを奪われたので、大きなピンチを招いてしまいます。見ている側は誰でも、「あっ、やばい」と思ったことでしょう。

その時に、右SBの選手が、相手の左WBの選手の進行方向に身体を入れて背中で相手をブロックして、ノーファールでボールを奪います。何でもないように簡単におこなったプレーなのですが、このSBの選手のプレーを見て「これは教えられるプレーではないな」と思いました。味方のCHのボールがどこに出されるのか。相手の左WGのトラップするボールはどこに置かれるのか。もしも、相手のトラップが大きかったら、トラップしたボールと相手の間に身体を入れようと瞬間的に判断したのです。

このように瞬間的に正しいプレー選択することが重要で、彼のプレースタイルこそが「インテリジェンス」と呼べるものなのです。クライフが言った「悪いパスをいいパスにする」とは、「インテリジェンス」を感じさせるプレーのことなのです。

川本梅花

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