川本梅花 フットボールタクティクス

【連載】サッカーの起源を知っていますか?【1日1回読むだけで身につくサッカーの見方の基礎知識】

【1日1回読むだけで身につくサッカーの見方の基礎知識】

サッカーの起源を知っていますか?

サッカーの起源について考えだすと、人類の起源にまでさかのぼってしまいます。オランダの哲学者ヨハン ホイジンガ(1872-1945)は、著書『ホモ・ルーデンス』の中で「動物がサッカーをするようになったのは、人間に教えられる前からだ」と記しています。つまり、人類の起源よりも前に、「ボール遊び」は存在していたと言うのです。しかし、一個のボールを使ってあるルールの下でゲームをするのは、人間の特有の行為であったと思われます。

古代の人間は対立的構造の中で生活をしていたと考えられています。フランスの文化人類学者クロード レヴィ=ストロース(1908-2009)は、「トーテム」という用語を持ち出して古代の人間の対立的構造を説明しています。「トーテム」とは、「特定の集団や人物、(部族)や(血縁)に宗教的に結び付けられた野生の動物や植物などの象徴のこと」(大辞林より)を意味します。つまり、部族はそれぞれのトーテムを明かして、二つのグループに分かれて対立しあっていたのです。これが、「対立的構造」の意味になります。兄のグループと弟のグループといった対立を指します。

「対立的構造」の村社会の中で、部族は対抗関係を明らかにするために、儀礼上の戦いをするのです。この戦いに登場するのが、何らかの球体でした。部族は、手や足で球体を投げたり押したりします。球体はまさにシンボルとなっていくのです。フランスの社会学者ロジェ カイヨワ(1913-1978)は、「サッカーとは、対立する二つの兄弟グループが太陽球の争いに加わることだ」と言っています。さらに「最も確からしいのは、ボールの動きが太陽の動きを象徴していたからだろうことと、一方の陣営が勝てば他方のキャプテンの死がもたらされ、そのことが、夜の力に昼の力が打ち勝つことを意味していただろうことである」と述べます。

球体を使ったゲームは、古代にまでさかのぼることができます。部族間の対抗関係を明らかにする儀礼上のゲームは、聖なるものに対する勤めを意味していたのではないか、と考えられているのです。

次回は、ギリシャ時代の物語の中に、球体を使ったゲームが記されているので、そのことについて話します。その物語とは、詩人ホメーロスの『オデュッセイア』の第八歌の中で詠われているのです。

川本梅花

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ