川本梅花 フットボールタクティクス

【ノンフィクション】#谷尾昂也 優しさと闘志を同居させるストライカー【無料記事】#ヴァンラーレ八戸 @vanraure #Vonds

谷尾昂也 優しさと闘志を同居させるストライカー

谷尾昂也の愛称は「マル」という。ある時、谷尾に「マル」の由来を尋ねたことがあった。

「高校1年生の時、3年生の先輩に『お前、外国出身に見えるな』と言われました。いやー、実際、それ、いまでもよく言われるのですが。それで、その先輩が『お前を今日からマルクスと呼んでやるよ』となったのですが、『マルクス』と呼ぶのが面倒くさいから『マル』にしようとなりました。移籍したチームでは、最初のあいさつで『マル』と呼んでくださいと、自分で言うようにしています」

マルの名前を最初に知ったのは、関東サッカーリーグ1部に所属するVONDS市原FCに彼が在籍していた時だった。現水戸ホーリーホックのゼネラルマネージャー(GM)である西村卓朗がVONDSのGMをしており、西村を取材するためにゼットエーオリプリスタジアムで観戦した時、マルの姿を見たことがある。しかし、試合でのプレーは一度も見たことがなかった。それにはある事情があった。

「最初の半年は、試合に使ってもらっていました。ケガをして、そこから試合に使われなくなりました。ケガをして、そこからベンチですね」

VONDS時代のマルの印象を西村はこのように話した。

「性格が優しいんですよね。もっと闘志を出してもいいのかな、と。もちろん、いまでも気になりますよ。ヴァンラーレ八戸で点を取っているのも知っています」

マルが八戸に来てから3年目になる。加入のキッカケは八戸の強化部長から直接連絡をもらったことだった。「Jリーグでプレーできるとは、自分でもびっくりしてます」とマルは話す。そんな彼は、今季、自信を持ってプレーを続けている。それには2つの理由がある。「昨季JFLで二桁取れたのが自信になっています。それと、八戸のサッカースタイルが自分に合っています。縦にロングボールを入れて、前からプレスを掛けるスタイルです。足元で細かくボールをつなぐサッカーよりも、こっちの方が好きですね。自分が動いて空いたスペースに人が入ってくる。チームのためにという気持ちを持ってプレーする。自分は伸び伸びプレーさせてもらっています」。

そんな八戸も大石篤人監督が今季就任して、「つなぐサッカー」を目指していた時があった。そうした状況を、マルは、こんな風に説明してくれた。

「いまは、ディフェンスからロングボールを蹴って、という形でやっています。ただ、前半戦はボールをつなごうとする意識が強くなってうまく行かずに、立ち上がりで失点する機会が多くなってしまった。ゲームへの入りの部分にロングボールを使っていけばいいと思います。ただ昨季より、多少は全体的に、つなぐようになっています。例えば、サイドチェンジが増えたりとかですね。でも、やることはそんなに変わってないです」

「最初から試合に出たい」

とマルが呟(つぶや)いたことがあった。

サッカー選手ならば誰もがそう願う。

マルも同じような野心を抱いている。誰かと競い合う時に、彼の優しさが邪魔をしないのか。優しさと闘志を同居させたストライカー。本当にそんな稀な存在はいるのだろうか。ピッチでは闘志を、ピッチを降りたら優しさを。おそらく、マルが目指しているストライカー像は、そうした領域にいる存在なのかもしれない。

川本梅花

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