川本梅花 フットボールタクティクス

【コラム】#久保建英 マジョルカで起用されるかは監督の戦術に合うかが全て【無料記事】

久保建英が起用されるか、監督の戦術に合うかが全て

LaLiga Jornada 3
VALENCIA CF 2-0 RCD MALLORCA
https://www.laliga.com/partido/temporada-2019-2020-laliga-santander-valencia-cf-rcd-mallorca-3

久保建英、11人目のスペイン1部リーグ出場選手に

久保建英がスペイン1部リーグ(ラ・リーガ)でデビューを果たした。9月1日に行われたラ・リーガ第3節、久保が所属するRCDマジョルカは、バレンシアCFと対戦。試合はダニエル パレホ(バレンシア)が2本のPKを決め、0-2でマジョルカが敗れた。久保は79分にピッチへ送りこまれる。

スペイン1部リーグに出場した日本人は、久保を除いて10人。その選手名と出場試合数の上位から記す。

  1. 乾貴士 110試合
  2. 大久保嘉人 39試合
  3. 柴崎岳 29試合
  4. 家長昭博 18試合
  5. 城彰二 15試合
  6. 中村俊輔 13試合
  7. 西澤明訓 6試合
  8. ハーフナー マイク 5試合
  9. 清武弘嗣 4試合
  10. 指宿洋史 1試合

最も多く出場している選手は、今季より古巣・SDエイバルに戻った乾貴士で110試合。一方、マジョルカにとって大久保嘉人(ジュビロ磐田)、家長昭博(川崎フロンターレ)に続く3人目の日本人選手となる久保は、デビューを果たしたばかり。これからラ・リーガで、どれだけ多くの試合に出場できるのか、楽しみで仕方がない。

久保建英、バレンシア戦における3つのシーン

さて、バレンシア戦における久保のプレーを見ていきたい。

79分にピッチへ入った久保にボールが渡ったのは、82分になってからである。それまでの3分間、マジョルカは左サイドにボールを集めて攻撃をしてきた。右サイドにいた久保は、自分にボールが来ないのを見て、中央に入ってボールをもらえるように動く。しかしフリーにもかかわらず、久保にボールは回ってこない。

82分、久保はボールを受けると、ドリブルで相手をかわしてラゴ ジュニアにパスを出す。ボールを受けたジュニアは、ゴールライン近くまでボールを運び、中央にマイナスのパスを出す。しかし、そのスペースには味方はおらず、簡単にクリアされる。

85分、相手がドリブルで駆け上がり、方向を少し変えようとする瞬間、久保が相手とボールの間に体を入れてボールを奪う。久保は「守備ができないと試合に使われない」というスペインサッカーの常識を知っているから、激しいコンタクトを試みたのだろう。ボールを持ってドリブルで相手を抜こうとした時に、ボールが相手の足に当たってしまう。転がるボールに触れたのはパレホだった。久保はボールを追いかけるが、ゴールラインまでボールを運ばれてブロックされる。久保は無理にボールを奪おうとしてファウルと判定される。

後半アディショナルタイム、再び久保にボールが渡る。久保はゆっくりドリブルを開始しながら周りの状況を見る。無理に相手と勝負せず、ボールを味方に預ける。その直後、試合の終わりを告げる笛が鳴らされる。

過去、日本人の誰もが通ってきた道を久保も歩むことになった。加入直後の試合で、久保にボールが回ってくるはずがない。久保の特徴を知らない選手たちが、18歳の日本人を信用してボールを預けることはない。これは当たり前の話だ。ただし、マジョルカに所属する選手の力量を見る限り、パスミスも目立ち、決して多くの得点機会は作れないだろう。いずれは久保の能力が必要とされるはずだ。それまで、いかにして久保が味方から信用を得ていくのか、注目したい。

久保建英が起用されるか、監督の戦術に合うかが全て

久保がいるマジョルカは、どのようなチームなのか。

かつてのマジョルカは、ラ・リーガの有力チームだったものの、2012-13シーズンを18位で終え、セグンダ(2部)に降格。そして2016年1月、NBA(北米のプロバスケットボールリーグ)フェニックス・サンズのオーナー・ロバート サーバーと、サンズの選手だったスティーブ ナッシュの2人によってクラブは買収される。その後、セグンダ・ディビシオンB(3部)まで降格するも、2年連続の昇格で2019-20シーズンから1部に復帰。当初は2人のオーナーに懐疑的だったファンも、「クラブの救世主」と言うようになる。

2017年からチームを指揮するビセンテ モレノ監督は昇格の立役者だ。期限付き移籍ながら、チームの中心選手であるセンターバック(CB)のマルティン ヴァリエントとFWアンテ ブディミールの完全移籍に成功。レアル・マドリーのカンテラ出身で攻撃的MFのアレックス フェバスも加入させた。さらに期待のFWとしてアルゼンチン出身のパブロ チャバリアを獲得。基本のフォーメーションは「4-4-2」のボックス型を採用する。

NBAの著名人がオーナーではあるものの、それは資金が潤沢であることを意味しない。そのため、これ以上の大型補強は望めず、現状の選手のレベルアップを期待しながらの戦いになる。そうした中で、期限付き移籍で加入したのが日本代表MF久保建英だった。今後、久保が起用されるか。それは、モレノ監督の戦術にマッチしているかどうかで判断される。モレノ監督が「自分の戦術にマッチしない」と判断すれば、久保にチャンスが回ってくることはない。

キリンチャレンジカップ2019(9月5日vsパラグアイ代表)と2022FIFAワールドカップ・カタール・アジア2次予選兼AFCアジアカップ中国2023予選(9月10日vsミャンマー代表)の日本代表メンバーに招集された久保。日本代表でのプレーも、モレノ監督にとっての判断材料になるかもしれない。

川本梅花

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