川本梅花 フットボールタクティクス

【試合分析】3バックと4バックを併用…#セレッソ大阪 は強くなると確信【無料記事】J1第9節 #大分トリニータ 戦 J1第10節 #松本山雅FC 戦 #cerezo #trinita #yamaga

選手のレベルを引き上げるロティーナ監督の手腕

目次
あらためて「フォーメーション」と「システム」の違い
セレッソ大阪と大分トリニータ、3バックの違い
3バックと4バックを併用するレベルへ
松本山雅FC戦で見えた得点力向上の兆し

2019明治安田生命J1リーグ第9節
セレッソ大阪 0△0 大分トリニータ
https://www.cerezo.jp/matches/2019-04-27-14/

2019明治安田生命J1リーグ第10節
松本山雅FC 0○2 セレッソ大阪
https://www.cerezo.jp/matches/2019-05-04-14/

5月4日の土曜日、明治安田生命J1リーグ第10節、松本山雅FC対セレッソ大阪が、サンプロ アルウィンで行われた。

J1第9節終了時点で、ホームの松本は3勝2分け4敗で11位。反町康治監督が指揮を執る。前節・FC東京戦は0-2で黒星。この試合では2試合ぶりの白星を狙う。昨季まで東京ヴェルディを指揮していたロティーナ監督率いるC大阪は、勝ち点8で13位。前節・大分トリニータ戦は3バックで臨み、スコアレスドローに終わった。

あらためて「フォーメーション」と「システム」の違い

筆者は、C大阪の前節・大分戦を見て「C大阪は強いチームになれる」と確信していた。大分戦のシステムは「3-4-2-1」。大分と同じフォーメーションでも、システムが全く違っていた。

「フォーメーション」と「システム」について説明する。「フォーメーション」は選手それぞれを横のラインから見て、その並びを単純に数字で表したもの、具体的には「3-4-2-1」という表記になる。日本ではGKを示す「1」を省略するが、オランダやスペインではGKも機能上、フィールドプレーヤーの1人として捉えるため「1」を省略せず、「1-3-4-2-1」と表記される。

「フォーメーション」が単純な数字の並びなのに対し、「システム」は、選手がフィールド上で、どのように配置されているかを示したものとなる。従って「フォーメーション」のように数字だけでは表現できず、選手の役割の説明、あるいはフィールドを上から見た平面図などが必要となる。

「システム」を理解する上で重要となるのは、チームが選手に対し、具体的に何を求めているかだ。DF、MF、FWのラインを捉え、そのラインで、どのような形を作っているかを確認する。こうして選手の役割を理解するのだ。筆者は「フォーメーション」と「システム」を、このように使い分けている。

セレッソ大阪と大分トリニータ、3バックの違い

さて、C大阪の話題に戻ろう。

C大阪と大分はともに3バックながら、大きな違いがある。それはビルドアップの際に見られる。C大阪は、基本的にDF3人でビルドアップを行う。C大阪が守備の際は「5-4-1」、FW都倉賢をトップに残し、5人のDFと4人のMFできれいな2ラインを敷く。彼らの動きは、均整が取れていて規律的でとても美しい。C大阪の選手が、ロティーナ監督の指導の下で組織的な動きを学んで実践していることがよく分かる動きだった。

一方の大分は、MF島川俊郎が右のセンターバック(CB)の横に並んで4バックを作りながらボールを前進させる。大分の片野坂知宏監督はサンフレッチェ広島コーチ時代、現北海道コンサドーレ札幌監督のミハイロ ペドロビッチのやり方を継承し、進化させている。

3バックと4バックを併用するレベルへ

J1第10節を終えて、C大阪の総得点はわずかに7。リーグワースト3位だが、守備さえ落ち着けば、攻撃に人数を掛けることが可能となり、必然的に得点力は増すはずだ。ロティーナ監督は「まずは守備の構築から」と考え、チームを作っているように思われる。

それは、2-0で勝利を収めたJ1第10節・松本戦後の監督会見からも読み取れる。

今の我々のアドバンテージは、3枚でも4枚でも、両方のシステムでプレーできるということ。試合の状況に応じて優位に試合を運ぶために両方のシステムを使えるということが、我々のアドバンテージになっています。

大分戦では3バックを採用したC大阪だが、松本戦では4バックを採用していた。C大阪の4バックは、両CBが左右に大きく広がり、その間にMFの奥埜博亮かレアンドロ デサバトが降りて3バックとなり、ビルドアップを行う。大分戦の3バックも、松本戦の4バックも、完成度は高い。つまりロティーナ監督はJ1第10節までに、3バックと4バックの両方を使いこなせるまで、選手のレベルを引き上げたことになる。

残された課題は「守備の強度をより高めること」と「チャンスを増やし得点力を上げること」である。ここでは後者について、松本戦における攻撃を分析する。

松本山雅FC戦で見えた得点力向上の兆し

松本のシステムは「3-4-2-1」で、スピードのある前田大然と中美慶哉をシャドーストライカーに置く。C大阪は「4-4-2」。中盤はボックス型だ。両チームのシステムを組み合わせた図は、以下の通りだ。

ロティーナ監督の狙いは、松本の3バックが5バックなる前に攻撃をすることである。松本のウィングバック(WB)の田中隼磨と高橋諒は、攻撃の際に高い位置を取る。しかも守備時には素早く帰陣し、5人でディフェンスラインを形成する。従って、ロティーナ監督は、WBの2選手が最終ラインに戻る前に、2トップを目掛けてボールを放り込むことを要求した。ここに試合のポイントがある。

試合のポイント

ボールを2トップに当て、手数を掛けずゴール前に迫る。

21分、ブルーノ メンデスの先制点は、次のような展開から生まれている。

図式化すれば以下のようになる。

パス1 右サイドハーフ(SH)の水沼宏太がブルーノ メンデスにミドルパスを送る。

パス2 ブルーノ メンデスは、ヘディングでエンドライン近くにボールを送る。

パス3 MF奥埜博亮がボールに追いつくと、ダイレクトでマイナスのクロスをブルーノ メンデスに上げる。

シュート ブルーノ メンデスは、松本DFの前に入ってヘディングでゴールネットを揺らした。

5人でディフェンスラインを構えられると、その壁を突破して得点することは難しくなる。

だが5人がそろう前に、前線へボールを運べれば、先制点の場面のように、相手DFと1対1になる機会が増える。こうした状況を数多く作れば、得点力は上がる。ロティーナ監督の指示を忠実に実践して勝利を手にしたC大阪の選手たちは、日に日に自信を付けるだろう。

C大阪は強くなる。そう確信させた試合だった。

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