川本梅花 フットボールタクティクス

【無料記事】「君は、ここにいる選手じゃない」 と僕は村瀬に言った。【コラム】第17話:来季のJFLはすごく面白い、特に東北ダービーは。

「君は、ここにいる選手じゃない」 と僕は村瀬に言った。

コバルトーレ女川がJFL(日本フットボールリーグ)に昇格した。

2017年11月24日から26日まで、千葉県市原市のゼットエーオリプリスタジアムにおいて、全国地域チャンピオンズリーグの決勝ラウンドが行われた。コバルトーレは、4チーム総当たりのリーグ戦で3戦全勝を記録してJFLの階段を一気に駆け上がった。

来季のJFL、特に東北のクラブチームの戦いは興味深いものになる。

まず、主力メンバーの退団と監督の辞任によって、チームの弱体化が心配されるラインメール青森。筆者が前回のコラムで大量の離脱者は「お金の問題」であると記した。そのことに関して、誤解がないように追記する。「お金の問題」とは、たとえば、「ギャラのアップが見込めない」などの近くにある問題ではない。当然、クラブは選手たちに「アップしたギャラ」を提示している。僕が述べた「お金の問題」とは、J3に上がるまでの設備投資や準備資金、さらに環境整備などを含めて、レベルアップするチームを支えられるだけの「お金」という意味で、将来の「お金の問題」のことである。

退団した選手たちはと言えば、彼らも相当に迷ったことだろう。「アップされたギャラ」を取るのか、それとも「J3にすぐに上がれる可能性のあるクラブ」を選択していくのか。選手たちは、いろいろ考えての決断をしたことだろう。

僕は、「アップしたギャラ」を提示して、今季の選手の成績を評価し、ある一定の金額を示したクラブ側にも敬意を払いたい。青森での厳しいサッカー環境の中、チーム存続を決めてJFL2位の成績を得たクラブは、一年を通してよくやったと思う。

退団した選手たちは、年齢を考えると、最後のチャンスかもしれない。何が最後のチャンスなのかと言えば、Jと名前のつくリーグでプレーできるチャンスのことである。彼らには、もう一度、夢を見てもらいたい。

個人的には、村瀬勇太選手に頑張ってもらいたい。
「君は、ここにいる選手じゃない」
と僕は、実際に、本人に伝えたことがあった。
ラインメールで彼と最初に会った時、「何で、ここにいるの?」と尋ねたほどで、彼のプレーは美しく、十分に見る者を魅了するだけの能力がある。彼が、Jで再びプレーする姿を見たいし、ぜひ見せて欲しい。

前監督の葛野昌弘の采配と力量には感服する。彼が指揮官でなかったら、ラインメールはまとまらなかったはずだ。2014年に監督になって、当時は、選手の中でタバコを吸う者や、練習でもいい加減な姿を見せる者がいて、サッカーでお金をもらえるようなチームではなかった。

そうした腐った要素を根本から叩き潰すために、大きな意識改革をするために、北海道に帰省していた河端和哉選手を口説き落とし、ラインメールに加入させる。そして、東北社会人1部リーグからJFLへ昇格させて、負けないチームを作ってきた。
こうした作業は、葛野前監督でなければなし得なかった偉業だ。

青森にはもう一つ、JFLに加入するクラブがある。ヴァンラーレ八戸は、柱谷哲二氏を監督に招いてJ3昇格にチャレンジしたが、想いは実現しなかった。しかし、選手の入れ替えと新監督の招聘は、J3への再チャレンジにふさわしいものになるはずだ。

さらに、ソニー仙台は実力者が揃う強豪クラブである。ラインメール青森、ヴァンラーレ八戸、ソニー仙台、コバルトーレ女川の4チームによる東北ダービーは、ものすごく面白い戦いになる。

僕の青森への帰省回数も、来季は増えそうだ。

川本梅花

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