川本梅花 フットボールタクティクス

【インタビュー】JFL 1st第6節・東京武蔵野シティFC戦 試合後の談話:河端和哉その2【無料記事】

JFL 1st第6節・東京武蔵野シティFC戦 試合後の談話:河端和哉その2

第19回日本フットボールリーグ ファーストステージ第6節
東京武蔵野シティFC対ラインメール青森FC
2017年4月29日(土)13:00キックオフ
http://www.jfl.or.jp/jfl-pc/pdf/2017A001/2017A0010615.pdf

試合後の談話:河端和哉


――3月26日に行われたファーストステージ第4節・FC今治戦[1〇0]について聞きたいのですが、どんな試合経過でどんな展開になったんですか?

河端 今治とやる時には、やっぱりボールを持たれますね。今治は、どこのチームとやろうと、相手がうちでなくても、ボールを自分たちで持つサッカーをやるチームなんです。まあ、そういうチームなんで、展開的には、ずっと今治にボールを持たれる。そんな試合展開でしたけど、その中でもうちは、この試合を入れて対戦するのは三度目なんです。うちはカウンターのチームですし、ショートカウンターのチームなんで、今治には苦手意識はないんですよ。

――今治がボールを持って、ラインメールがショートカウンターという戦術なんですね。

河端 そうですね。うちも引いて守るだけじゃないんです。フラットなゾーンっていうか。前から積極的に行くわけでもない。ペナルティエリア付近まで下がって引いて守るわけでもない。ちょうど真ん中のところで守って、そこを基準にして守備のポジションについてしっかり守る。今治への守備戦術はそんな感じでやりました。

今治はボールを持つサッカーをするので、結果的にうちが引いて守ることはなるんです。相手にフリーでボールを持たれる時間が長いので、どうしても全体のラインは低くなってしまった。それでも、コンパクト陣形を保ちながら、しっかり守りながら守備ができたんで、失点は防げたんだと思います。

――得点のシーンですが、どういう形で1点が入ったんですか?

河端 79分に、FKから近石(哲平)が決めたんです。今治は、セットプレーの守備がゾーンディフェンスなんです。ゾーンで守るというのは、キッカーからある程度いいボールが入って、選手と選手の間に飛び込めば得点のチャンスがありますから。村瀬(勇太)が直接FKをファーサイドに蹴ったんです。いいボールにいい入りができれば、ある程度決まっちゃうんですよ。

――今治は、セットプレーをゾーンで守っていたですか?

河端 はい。細かく言えば、ゾーンとマンツーマンの併用みたいな感じです。でも、向こうは特に、ヘディングが強い選手もいないですから。

――相手の選手との間にボールが入って、そこに後方から飛び込めば得点できる機会はありますからね。

河端 点が入った時というのは、真ん中もファーサイドもいい感じで選手みんなが動き出しているんです。村瀬が蹴ったボールが、やっぱり最高にいいボールでしたよ。GKも前に出られないようなところに蹴るんですよ。GKと相手の選手の間にボールが落ちて、近石が後ろから走って突っ込んで「ズドン」ですね。GKはノーチャンスって感じですよね。「ドンピシャ」で「ズドン」ですね(笑)。

――ポゼッションサッカーを志向するチームに「ゼロ」で守り抜いたのは、たいしたものですね。

河端 ピンチは、後半1回あったんです。うちのGKの伊藤(拓真)がいいポジションでボールを取ってくれた。集中力も高かったですよね。今治は、攻撃に時間を掛けるんで、ボールを持ってうちを崩すのにも時間が当然掛かる。だから、シュートを打たれるのにも時間が掛かるんです。

正直に言ったら、時間を掛けてくれた分、ゴールカバーもできてしまう。ある程度人数がそろった状態でシュートを打たれる場面だったんです。実は、J3を目指す今治の、それが課題にもなるだろうし。個の発想っていうのか、思い切ったことがないチームなんです。メゾットに当てはまったチーム。それはそれで素晴らしいことなんですけれども。

――ラインメールは守備の時に「5-4-1」のシステムになりますよね。相手があるので、結果的に引いてしまったけれども、守備は、しっかりできたんですね。

河端 そうですね。結果的には引いてしまった、と言えるかもしれませんが、それは今治がボールを持つサッカーをするからで、うちはしっかりとコンパクトに守備ができていました。

――ところで、昨季までラインメールにいた三田尚希のプレーはどうでしたか?

河端 僕は、三田とは一番仲が良かったんです。(高校の後輩ということもあって)かわいがった選手でした。「考えてサッカーをする」と「考えながらサッカーをする」って微妙に違うと思うんです。ラインメールにいた時は、三田のいい部分を前面に出してプレーをしていた。チームの方針や、チームのやり方を100パーセント受け入れて、こうなんて言ったらいいんだろう、従いながらプレーをする選手になったっていうか。考えながらプレーする選手になっていましたね。

彼はまだJリーグを経験していない。大卒でうちにきた。一度は、チームの方針に沿ったプレーというものを経験しないといけない。チームのやり方、岡田武史さんのやり方にしっかり順応してやっていました。ただその分、彼のいい部分も消えている。三田が試合にいままでどうして使われているのか? 考え方の中に、ちょっと足りなかった部分があったので、試合が終わってから彼と喋ったんです。

――三田の特徴は、DFの裏に抜けるスピードですよね。

河端 まさしくその通りで、次の日に岡田さんも同じことを言ったみたいです。「あくまでもメゾットはメゾットでしかない。特に新加入で入ってきた選手は、自分の特長を生かせてない」と。今治が勝ててないのは、そこだと思いました。今治に入ることによって、いままで今治になかった部分っていうか、思い切りの部分っていうのを買われ、入ったんだと思います。

――戦術に縛られている、という感じなのですか?

河端 極端な話、そうですね。戦術が素晴らしい。戦術に当てはめる。今治は、JFLにいる普通のチームとは違うんです。普通のチームは、選手に戦術を合わせる。選手の特徴を使って戦術を組み立てていく。JFLやJ3のカテゴリーであれば多少、そういうチームが多いとは思うんです。今治は、別の着地点を見ている。そんな感じです。

――スタジアムを新しく作る。「さあ次はJ3にチャレンジするぞ」という明白な目標があることも、チームの大きな強みになっているのでしょうね。通常は、選手の質に合わせて戦術が組み立てられるんですが、逆に、自分たちの目指すサッカーはこうだから、それに選手が合わせられるかどうかを計っているところもあるのでしょう。

河端 だからね、あいつには言ったんです。「意見するな」って。普通だったら、ある程度主力の選手となればチーム戦術に意見を言いたくなる。主力選手であれば、ある程度話し合ってチームを作っていこうとします。これは僕の勝手な考えなんですけど、今治にとって、いまいる選手はJFLのカテゴリーで戦う選手でしかないんです。もっとカテゴリーが上がっていけば、いまのメゾットに当てはまる質を持った選手を加入させれば良いという考えがあるんじゃないか、と。いまいる選手の質に合った戦術を採用してJFLからJ3に上がっても意味がない。だから、いまいる選手のサッカー観を話されて話し合ったところで、そんなのは必要じゃないっていうことだと思うんです。

極端な話、そんな考えを述べる選手は、ほとんど要らないんですよ。いまやっているメゾットに付いてこられるかどうか。その中で、その選手の個の特長を出せる選手。カテゴリーが上がっていけば、質の高い選手を獲得できる。そうしたらいまのメゾットを当てはめて、質の高い選手にやらせる。あるレベルの選手なら、難しくないメゾットなんです。そんな話を本人に言ったら、納得していましたから。今季、今治に加入したJリーグ経験者の選手でも、練習では抜群にうまいけど、試合には出ていない。当事者じゃないから、その理由は詳しく分からないんですが。

――要は、「チームのやろうとすることに一度合わせてくれ」ということなんですね。君の個人の考えは置いておいて、チームとしてJ3に上がるっていう目標があるんだから、こっちのサッカーに合わせられるかどうかを、やっぱり試しているような部分があるんですかね。

河端 「君は以前J1にいたんだろうけど、いまはJFLのチームに落ちてきた選手なんだろう。それだったら、こっちの考えに合わせてみろよ。それができないんなら、どこに行っても何も変わらないぞ」ということを含んでいるような気がします。厳しいですけどね。

――それは分かります。すごく分かります。要するに、自分自身をいかにたたきつぶすか、というところでしか始まらないじゃないですか。サッカーに取り組む姿勢とかサッカーに対する考え方が良かったら、もちろんJリーガーだったならばある程度技術はあるわけですけど、結局、カテゴリーが下がったところでプレーしている選手だということですよ。

例えば、河端くんのようにベテラン選手ならばそれも考えられるけど、問題なのは、フィジカルとメンタルがかみ合わなかった結果ということですよね。J2リーグにもこういう選手はたくさんいて、J1からJ2に来た現実を直視できないでいる。もう一度はい上がってこないと、試合にさえ使われないでサッカーができない選手になってしまう。

河端 はい、極端な話そうだと思います。だから、チームは選手を試している部分があると思うんです。

――ラインメールに話を戻しましょう。今治戦の勝利で2連勝になりました昨季もそうですけど、春先はコンディションもなかなか上げられず、チーム戦術もすぐには落とし込めない。いまはどれくらいの完成度ですか?

河端 監督はどう思っているか分からないですけど、僕自身は正直まだまだですね。

――チームの完成度は、70パーセントって言ってましたよ。

河端 僕自身はまだまだですよ。選手が変わったり、うちのやり方に、まだ合わせきれてない部分があって。

――ブリオベッカ浦安戦[1〇0]を見て思ったんですが、前線の選手が変わりましたよね。中村(太一)くんも奥山(泰裕)くんもケガで出られなかった。そうするとディフェンスが緩いんです。もう一歩、少し前に激しくプレスに行かないとならない。すごく厳しい言い方なのですが、移籍してきた選手は、例えば前のクラブで試合に出られなかったんですよね。おそらくその理由は、一歩の問題だと思うんです。プレスバックするスピード。相手に、ちょっと触れるくらいプレスに行く。相手も意識してしまうので、判断を間違う可能性も出てくる。

河端 そうなんですよね。ある程度若い選手だったらまだ分かるんです。ある年齢になって、経験も積んでいるじゃないですか。いろんなチームでプレーして、このカテゴリーでやっている選手。だから、もったいないんですよね。そこの部分が緩いっていうか。まあ、そこの部分が緩くても、スペシャルな部分を出してくれるんであれば、多少、考える部分もあるんですけど。そこでもスペシャリティーを出せないとなると、厳しいですよね。チームや環境に慣れてくれば、力を発揮してくれるとは思っているんです。

――分かります。結局、選手が気付くかどうかですよね。例えば、あるクラブから来た選手は、技術的にもフィジカル的にもしっかりしている。あるレベルには達している選手。でも、前にいたチームでは試合に出られなかった。だからいま、ラインメールに来たわけじゃないですか。

河端 努力の仕方が間違っているんですよ。だから、まじめに努力はしてるんだけども、自己満足なんですよ。自分を周りに合わせる。そうではなく、自分のやりたいことはできる。でも、「ここだ!」という大事な時にはできない。

――そういう選手に対して、河端くんは、こうどうなの、ジレンマを持ったりしますか。話し合ったりしますか?

河端 彼らとは、信頼関係を作った上で、例えば性格を見て、話し方を変えたりだとかですけども、もちろん、そういう選手や新しく入った選手にも、いまいる選手にも、「ジレンマ」の部分は話をします。厳しく言うこともあるし、柔らかく話をすることもあります。はっきりと言うようにはしていますね。やっぱり、チームとして成り立っていかないといけませんから。

――葛野昌宏監督は、今治戦について何か言っていましたか?

河端 監督は結果が出たことには、すごく喜んでいます。次の試合に向けて、もっと高い位置でボールを取って攻撃をしたい、と。どうしても結果的には引いて守る形になってしまう。もう少し、高い位置での守備をしたい。1トップにボールが入った時、ワイドの選手を高い位置に持っていけるようにしたい、と。

――貴重な話、ありがとうございます。

川本梅花

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